ダブルスはともかく基本的にシングルスはバランスの崩しあいです。
ではバランスとは何かという話になるのですが、物理的に安定している状態ではありません。
シングルスはいやおうなくコートを常に動いているので、動きながらバランスをとらなくてはいけません。
バランスをとるために必要なことはシンプルで、行き過ぎないことです。
上半身だけが先に行くのではなく、下半身もついていくことだったり、右手だけが先に行くのではなく左側もついていくことです。
全身が緊張しすぎず、また力が抜けすぎていてもいけません。
各関節には適切な可動範囲、関係性があり、それを超えない範囲を守らなくてはいけません。
重心も体の外に出さず、体の内に保つようにします。
そうやって、全身の関係性を常に崩さずに動き続けることがバランスをとるということです。
別の言い方をすると、常にどこにでも動ける状態を作るのがバランスをとるということと言い換えることができます。
右に動くときも重心は7:3ぐらいで右に行きますが、少しは左側にも残すようにして、逆の意識も保つようにします。これが、10:0だと完全にバランスを崩しています。
また、打つときも気がはやるのを抑えて、冷静さを残しながら打ちます。動と静のバランスです。
逆に守るときも引くのではなく、前に行く気持ちを強くしながら相手に向かいます。
全力というのはバランスを崩さずに今できる一番よい均衡関係で相手に向かうことで、がむしゃらさとは違います。
そうやって、内面的にも外面的にも常に相対的な部分を崩さないようにして、どうにでも変化できる姿勢を作りながら戦うのがシングルスのバランスゲームだと思っています。
勝つ方法はその逆で、相手のバランスを見極めて、どちらかに行き過ぎるようにコントロールして崩します。相手がどうやってバランスを作っているのかを、見る聴く必要があります。
そうやって自分のバランス、関係性を常に作りながら、相手のバランスは崩していくというのがシングルスの醍醐味であって、単に距離を走る、走らせるのがシングルスではありません。